01 愛犬との別れ

 2020年7月23日の午前10時52分,我が家の愛犬ももちゃんが,15年と6か月の生涯を終えました。

 ももちゃんの毎日は,トイレに行くために私の妻を起こすことから始まります。トイレに行きたくなると,妻の顔をペロペロなめて起こします。トイレが終わると朝ごはんの催促です。餌にふりかけがかかっていないと,ふりかけが入っている棚の前に座ってワンワンと催促を続けます。

 食後の💩を済ませると,私たちを見送ってくれます。子ども達は学校へ,妻と私は職場へ。「ももちゃん,行ってくるね。お留守番お願いね。」と声をかける私たちを,ももちゃんは少し寂しそうに見送ります。お昼は南側の窓のそばで日光浴をしながらお昼寝です。私が帰宅すると,尻尾を振りながら嬉しそうに駆け寄ってきます。抱きかかえると私の顔をペロペロとなめてお帰りの挨拶です。そんな生活が去ってしまう2日前まで変わることなく続いていました。

 7月22日の朝,ももちゃんは朝ごはんの催促をしませんでした。いつもの元気がありません。仕事が休みだった妻は,すぐに病院に連れて行きました。その日は診察を受けて,帰宅しました。その日のももちゃんは,帰宅した私の姿を見ても駆け寄ってくることはありませんでした。私の方に顔を向けて尻尾をちょっと振っただけでした。

 翌日の朝,妻と2人でももちゃんを病院に連れて行きました。エコー検査,血液検査が終わった後で獣医さんの説明を受けました。

 

「すぐに入院させてください。全力を尽くします。しかし,かなり厳しい状況です。」

 

 妻と2人で横たわるももちゃんに声をかけ続けました。その時,ももちゃんが私たちに向かって吠えました。その弱々しい吠え声が,ももちゃんの最後の声になりました。ももちゃんを入院させるための手続きを取って一度,帰宅しました。その約2時間後にももちゃんは,旅立ちました。苦しむことなく眠るように旅立っていったそうです。

 

 自宅に連れて帰ったももちゃんの亡骸はまだ温かく,お昼寝をしている時とまったく変わりありませんでした。でも,私たちがどんなに声をかけても,ももちゃんが動くことはありません。23日の夜,ももちゃんと最後の夜を過ごしました。ももちゃんの亡骸は少しずつ冷たくなっていきました。

 

 逝ってしまう数日前までは,それまでとまったく変わらない日々を送っていました。15歳になってから,少しずつ動きがゆっくりになっていきましたが,愛犬のいる生活を楽しんでいました。もうしばらくは一緒にいられると決め込んでいました。

 こんな形で突然のお別れになるとは夢にも思っていませんでした。突然過ぎてまだ受け入れることができていません。8歳の息子は思い出すたびに泣いています。悲しい気持ちが癒えるまでにまだまだ時間がかかりそうです。でも少しだけ,ももちゃんの思いが分かってきました。

 

「私の元気な姿をしっかりと覚えていて」「私との楽しい思い出を忘れないでね」

 

 ももちゃんの思い通りになりました。ももちゃんと過ごした15年6か月を振り返ると楽しい思い出ばかりです。尻尾をフリフリしながら嬉しそうにしているももちゃんの姿が瞼に浮かびます。旅先の海で突然の大波にももちゃんがびっくりしていたこと,雪の上を一緒に走り回ったこと,泥だらけになって遊んだこと,私の鼻にいきなり噛みついたこと,食卓によじ登ってこっそり饅頭を食べていたこと。話し始めると止まりません。

 

 苦しんでいる姿を私たちに見せたくなかったんだね。最後まで私たちに気を使ってくれてありがとう。

 

 ペットは飼い主に降りかかる禍を,自らが引き受ける力を持っていると聞いたことがあります。もしかしたら,我が家に良くないことが起ころうとしていたのかもしれません。それを誰よりも早く察知して私たちを守ってくれたのでしょうか。

 

 ももちゃん,あんたは最高だったよ。ありがとう。